Webマーケティングって、何から始めればいいのか。SEOやSNS、広告運用など、手法は無数にありますが、本質を理解せずに施策を打っても成果は出ません。
重要なのは「売上の方程式」と「4つの施策」を体系的に把握することです。
本記事では、初心者でも今日から実践できるWebマーケティングの全体像を解説します。集客・接客・追客・ファン化の各フェーズで何をすべきか、どの手法を選ぶべきかまで、現場で使える知識を凝縮しました。
Webマーケティングの本質とは?
Webマーケティングとは、オンラインを駆使した施策で売れることを必然にすることです。
多くの人はWebマーケティングと聞くと、SEOやWeb広告といった個別の手法を思い浮かべます。しかし、本質はもっとシンプルです。
マーケティングの定義である「売れるを必然にする」という目的に対して、Webという手段を使うのがWebマーケティングなのです。
マーケティングとの違い
マーケティングは、商品やサービスを売るための全体戦略を指します。一方、Webマーケティングはその戦略の中で「オンライン」という領域に特化した手法です。
つまり、Webマーケティングは「マーケティング」という大きな概念の一部であり、接頭語に「Web」がついただけと考えるとわかりやすいです。
売上を生み出す方程式
Webマーケティングの成果は、次の方程式で表現できます。
売上 = インプレッション × コンバージョンレート × ライフタイムバリュー
- インプレッション:どれだけの人に見てもらえたか(露出数)
- コンバージョンレート(CVR):何%の人が購入や問い合わせをしたか(転換率)
- ライフタイムバリュー(LTV):一人の顧客が生涯にわたってもたらす利益
この方程式を理解すれば、どの施策がどの数値に影響するのかが明確になります。
Webマーケティングの4つの施策
Webマーケティングは「集客」「接客」「追客」「ファン化」の4つの施策に分類されます。
この4つのフレームワークを理解することが、Webマーケティングで成果を出すための第一歩です。それぞれの施策について、詳しく見ていきましょう。
集客:見込み客との接点を作る
集客は、潜在顧客と最初の接点を持つための施策です。どのようなシチュエーションで顧客と出会うかによって、3つのパターンに分けられます。
調べる(検討度:高)
顧客が自ら情報を探している状態です。購入意欲が最も高いタイミングといえます。下記のような手法があります。
- SEO(検索エンジン最適化)
- リスティング広告
- アフィリエイト広告
- MEO(マップエンジン最適化)
これらは顧客の能動的な行動に対応する手法であり、売上に直結しやすい特徴があります。
人から聞く(検討度:中)
知人や信頼できる情報源からの紹介で知る状態です。下記のような手法があります。
- インフルエンサーマーケティング
- 口コミ・レビュー施策
- PR活動
第三者の推薦という形で接点を持つため、信頼性が高いのが特徴です。
偶然目に入る(検討度:低)
顧客がまだ検討していない段階で認知してもらう施策です。下記のような手法があります。
- SNS運用(X、Instagram、TikTokなど)
- YouTube
- ディスプレイ広告
- コミュニティマーケティング
検討度は低いものの、幅広い層にアプローチできる利点があります。
接客:興味を購入につなげる
接客は「どこで」顧客に対応するかを考える施策です。
集客で獲得した見込み客を、実際の購入や問い合わせにつなげるための重要なステップです。
| 場所 | 具体的な手法 |
| Webサイト | LP(ランディングページ)、サービスサイト、ECサイト |
| SNS | アカウント設計、プロフィール最適化 |
| メール | メールマガジン、ステップメール |
| LINE | 友だち追加後のメッセージ設計、リッチメニュー |
| 電話 | カスタマーサポート、営業電話 |
| オフライン | 説明会、店舗接客 |
注意すべき点は、多くの企業がホームページしか用意していないケースです。サービスサイトやLPなど、目的に応じた接客の場を設計することで、コンバージョンレートは大きく改善します。
追客:離脱した顧客を呼び戻す
追客は「どうやって再度接点を持つか」を考える施策です。
一度興味を持ったものの離脱した顧客に対して、再アプローチすることで機会損失を防ぎます。効果的な追客手法は、下記の通りです。
- リターゲティング広告:サイト訪問者を追跡して広告配信
- 離脱ポップアップ:サイトから離れようとする瞬間に表示
- メールマガジン:定期的な情報発信で接点を維持
- LINE配信:プッシュ通知で直接アプローチ
- SNS更新:フォロワーに継続的に情報を届ける
特にLINEは追客機能に優れており、開封率が高いのが特徴です。ただし、LINEの施策を「追客」とだけ捉えるのは不十分です。
友だち追加前のアイコン設計や追加後のメッセージは「接客」に該当するため、施策の目的を明確に区別することが重要です。
ファン化:顧客を応援者に変える
ファン化は「どこでどうやって好きになってもらうか」を考える施策です。
既存顧客をリピーターや紹介者に育てることで、新規集客コストを抑えつつ売上を最大化できます。ファン化施策の例は、下記の通りです。
- 顧客限定コンテンツの提供
- 特別キャンペーンやクーポン配布
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
- SNSでの継続的な情報発信
- 丁寧なカスタマーサポート
- 顧客専用サイトの構築
- ホワイトペーパーなどの有益情報提供
たとえば、YouTubeで有益な情報を発信し続けることで、既存顧客から「こんなこともできるんですか?」という追加依頼が生まれるケースがあります。
これがクロスセルにつながり、LTV(顧客生涯価値)の向上に寄与します。ファン化は企業ごとに特性が出やすい領域であり、独自性を発揮できる施策です。
Webマーケティング手法の選び方
Webマーケティング手法の選択では「誰に」「どこで」「どうやって」お金を払うかを理解することが重要です。
Webマーケティングでは、主に2つの対象にコストが発生します。
コストが発生する2つの対象
コンテンツ
コンテンツとは、記事や動画、画像など、顧客に直接届くものです。ユーザーのニーズを深く理解し、価値ある情報を提供することが求められます。
プラットフォーム・メディア
プラットフォームとは、GoogleやYahoo!、SNSなど、コンテンツを届けるための場所です。各プラットフォームのアルゴリズムや思想を理解することが、成功の鍵となります。
支払い方法の3パターン
多くの人は「直接払う」方法しか思いつきませんが、成果報酬型やインフルエンサー活用の方がコストパフォーマンスが高い場合もあります。
| 支払い方法 | 具体例 | 特徴 |
| 直接払う | リスティング広告、ディスプレイ広告 | クリック課金など、プラットフォームに直接支払う |
| 成果に払う | アフィリエイト広告 | 成果が発生した時のみ支払う |
| 人に払う | インフルエンサーマーケティング | 影響力のある個人に支払う |
施策を検討する際は、この3つの視点を持つことが大切です。
マーケティングの基礎フレームワーク
Webマーケティングを実践する前に、マーケティングの基本フレームワークを押さえましょう。
Webマーケティングはあくまでマーケティングの一手法です。そのため、マーケティングの基礎理論を理解していないと、効果的な施策は打てません。
3C分析
3C分析は、市場環境を俯瞰的に把握するフレームワークです。
- Customer(顧客):ターゲット顧客のニーズや行動
- Competitor(競合):競合他社の強みや戦略
- Company(自社):自社の強みやリソース
この3つの関係性を分析することで、自社の立ち位置や差別化ポイントが明確になります。
4P分析
4P分析は、マーケティング戦略の具体的な要素を整理するフレームワークです。
- Product(製品):どんな商品・サービスか
- Price(価格):いくらで販売するか
- Place(流通):どこで販売するか
- Promotion(販促):どう宣伝するか
たとえば、すでに競合が多い青汁市場では、製品や流通で差別化が難しい場合、プロモーション戦略で勝負するという判断ができます。この4つのうち、どこに注力すべきかを見極めることが重要です。
ペルソナ設定
ペルソナとは、ターゲット顧客の具体的な人物像を設定することです。「20代女性」という漠然とした設定ではなく、次のような詳細な人物像を描きます。
- 年齢:23歳
- 職業:大学4年生(アルバイト生活)
- 居住地:東京都内(家賃7万円)
- 生活スタイル:昼は大学、夜は居酒屋でアルバイト
- 趣味・関心事:SNSで情報収集、節約志向
具体的なペルソナを設定することで、「どのような言葉で」「どのタイミングで」「どの媒体で」アプローチすべきかが明確になります。
よく「自分が欲しいものを売りなさい」と言われるのは、自分自身が明確なペルソナになっているからです。その人すら買わない商品を、誰が買うのかという視点を持ちましょう。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購入するまでの思考と行動の流れを可視化したものです。
たとえば、次のような流れです。
- SNSで商品を知る(認知)
- 興味を持ち、検索する(関心)
- Webサイトで詳細を確認(比較検討)
- LINEで詳しい情報を受け取る(購入意欲向上)
- 購入を決断(コンバージョン)
各段階で顧客がどう感じ、どう行動するかを想定し、適切な施策を配置することで、取りこぼしを防げます。
実践ケーススタディ
理論を理解したら、実際のケースで考える力を養いましょう。以下のケースに対して、どのような提案をすべきか考えてみてください。
新規事業立ち上げ「100万円でホームページを作りたいです」
「この事業は本当にホームページが必要なのか?」新規事業の場合、まず「集客」の導線を確保することが優先です。
接客の受け皿(ホームページ)に100万円をかける前に、営業資料で代用し、広告やアウトバウンド営業でテストマーケティングを行うべきです。
採用サイト制作「500万円かけたいのですが、見積もりをもらえますか?」
採用サイトは「接客」や「追客」に該当します。しかし、そもそも求職者を集める「集客」施策がなければ意味がありません。
採用サイトを作る前に、求人媒体の活用やSNS発信など、集客導線を確保する方が優先順位は高いです。
YouTube運用「再生数は取れていますが、問い合わせが来ません」
インプレッション(再生数)は獲得できているため、問題は「接客」にあります。動画からWebサイトへの導線や、LINEへの誘導設計を改善することで、コンバージョンレートを高められます。
また、ターゲット設定が適切かどうかも確認すべきです。
SEO上位表示済み「上位表示できているので、SEOには課題がありません」
「集客(SEO)は成功していますが、接客と追客の体制は整っていますか?」
記事のコンバージョンレート改善や、離脱者への追客施策(リターゲティング広告、離脱ポップアップ)を実施できているか確認すべきです。
YouTube単体「YouTube単体で見ると効果が低いのでやめようと思います」
「YouTubeを見た後に、検索や他の施策経由でコンバージョンする間接効果を測定していますか?」
YouTubeは認知や興味喚起に貢献し、他の施策のコンバージョンレートを高めている可能性があります。単体の数値だけで判断するのは危険です。
Webマーケターのレベル判別方法
Webマーケターの実力は「どれだけ儲かるか」を答えられるかで判断できます。
マーケターのレベルを3段階に分類すると、次のようになります。
初級レベル
初級Webマーケターの特徴は、何を目標にして何をやっているのかがわかることです。
- 単一の手法(SEOやリスティング広告など)にそこそこ詳しい
- 調べれば理解できる知識を持っている
- 複数の手法の存在は知っているが、実践経験は少ない
この段階では、施策の「点」は理解していますが、全体を「面」で捉えることができていません。
中級レベル
中級Webマーケターの特徴は、「それで、いくら儲かるの?」に答えられることです。
- ある課題に対して複数の仮説を用意できる
- 最も確からしい解決策を導ける
- 自分の得意領域や独自の方程式を持っている
- 施策の影響を定量的に説明できる
たとえば、「コンバージョンレートを1.5倍にする」と提案する際、それが売上にどう影響し、他の指標にどんな副作用があるかまで説明できるレベルです。
中級レベルに到達するには、売上や利益に責任を持った経験が重要です。
上級レベル
上級Webマーケターの特徴は、教科書にない解決策を編み出せることです。
- 複数の手法に超詳しく、最適な方法を導く確率が極めて高い
- プラットフォームのアルゴリズムに精通し、独自のノウハウを持っている
- インプレッションとコンバージョンレートを両立したコンテンツを生み出せる
- ターゲットのインサイトに刺さるコンセプト開発ができる
上級レベルのマーケターは希少であり、適当に100人選んだ中で5〜10%程度しか存在しません。
外部発注時の注意点
Webマーケティングを外部に発注する際は、「人で選ぶ」ことが最も重要です。
マーケティングの成否は仮説の質で決まります。そして仮説の質は、担当者の経験と思考力に大きく依存します。
発注時にチェックすべきポイントは、下記の5つです。
目標か予算を明確にする
「SEO対策をお願いします」ではなく、「月間問い合わせ50件を目指したい」や「予算100万円でできることを提案してほしい」と具体的に伝えましょう。
「いくら儲かるか」を質問する
提案された施策に対して、「これを実施すると、どれくらいの売上増が見込めますか?」と尋ねてください。明確に答えられるかどうかで、マーケターのレベルが分かります。
複数の仮説を確認する
優秀なマーケターは、一つの課題に対して複数の解決策を提示し、「なぜこの施策が最適なのか」を論理的に説明できます。一つの施策しか提案しない場合は、要注意です。
差別化ポイントを聞く
「あなたは何に強いのですか?」「他の人と違うところは何ですか?」と質問してください。明確な強みを持っているマーケターは信頼できます。
実績の転用可能性を確認する
全く同じ業界の実績がなくても、類似業界で得たノウハウをどう転用できるかを説明できれば、能力の高さが伺えます。
「歯科クリニックの支援経験をスポーツジムにどう活かせますか?」といった質問が有効です。
Webマーケティングに関してよくある質問
Q1:WebマーケティングとSEOの違いは?
SEO(検索エンジン最適化)は、集客手法の一つです。一方、Webマーケティングは集客・接客・追客・ファン化という4つの施策全体を指します。
SEOはWebマーケティングという大きな枠組みの中の一部分であり、売上を最大化するにはSEO単体ではなく、顧客導線全体を設計する必要があります。
Q2:Webマーケティング初心者は何から始めるべき?
まず「売上=インプレッション×CVR×LTV」という方程式を理解し、自社のビジネスがどの数値に課題があるかを把握しましょう。
次に、集客・接客・追客・ファン化の4つの施策のうち、最も弱い部分を特定します。多くの場合、集客に注力しがちですが、接客や追客の改善で大きく成果が変わることもあります。
Q3:Webマーケティングの予算はどれくらい必要?
目標によって、必要な予算は大きく異なります。新規事業なら、いきなり高額なホームページ制作に投資するより、営業資料で代用し、10〜30万円程度の広告テストから始める方が賢明です。
重要なのは「集客→接客→追客」の優先順位を正しく理解し、最も効果が出やすい施策に予算を配分することです。
Q4:Webマーケティングを外注する際の注意点は?
外注する際に最も重要なのは、「人で選ぶ」ことです。提案を受ける際は「この施策でいくら儲かりますか?」と質問してください。明確に答えられるマーケターは中級以上のレベルです。
また、一つの施策だけでなく、複数の仮説を提示し、なぜその施策が最適かを論理的に説明できるかもチェックポイントです。
Q5:YouTubeで再生数はあるのに問い合わせが来ないのはなぜ?
YouTubeのインプレッション(再生数)は獲得できているため、問題は「接客」にあります。動画からWebサイトやLINEへの誘導設計が不十分な可能性が高いです。
概要欄のリンク配置、動画内でのCTA(行動喚起)、遷移先のランディングページ設計を見直すことで、コンバージョンレートを大幅に改善できます。
まとめ:Webマーケティング成功の3つの鍵
Webマーケティングで成果を出すために押さえるべきポイントは、以下の3つです。
- 4つの施策を理解する:集客、接客、追客、ファン化のフレームワークで施策を整理する
- 方程式で考える:売上 = インプレッション × CVR × LTV を常に意識する
- 全体を俯瞰する:一つの施策だけでなく、顧客の導線全体を設計する
Webマーケティングは決して難しいものではありません。基礎を体系的に理解し、「なぜこの施策を行うのか」を常に考えることで、誰でも60点レベルには到達できます。
そして60点が取れれば、新規事業の立ち上げや売上の拡大は十分に可能です。この記事で学んだフレームワークを、ぜひ実践の場で活用してください。
出典:WebマーケティングTV【StockSun株式会社】『【神授業】Webマーケティングなんて初心者でも楽勝!この1本で基礎をマスターせよ』

